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RSウイルス感染症・RSウイルスワクチンについて
1.RSウイルス感染症とは
RSウイルス感染症は、RSウイルスによって起こる急性の呼吸器感染症です。
新生児から高齢者まで、年齢を問わず感染する可能性があり、何度も感染を繰り返します。
特に乳幼児では初回感染時に重症化しやすく、生まれてから6か月以内の赤ちゃんは免疫機能が未熟であり、RSウイルスに感染すると重症化することがあるため注意が必要です。
生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の乳幼児が少なくとも1回は感染するとされています。
また、以下のような乳幼児では重症化する可能性が高いとされています。
- 早産児
- 生後6か月未満の乳児
- 心臓や肺に基礎疾患がある児
- 免疫不全のある児
- ダウン症の児
乳幼児だけでなく、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患を有する高齢者も感染・重症化に注意が必要です。
2.感染した場合の症状・経過
潜伏期間
感染から症状が出るまでの期間は、おおむね2~8日とされています。
主な症状
初めは以下のような上気道炎症状が現れます。
- 発熱
- 鼻水・鼻汁
- 咳
多くの場合、上気道炎の症状が数日続いた後に軽快します。
一方、一部では症状が下気道へ進行し、
- 気管支炎
- 細気管支炎
- 肺炎
- 強い咳
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸)
- 呼吸困難
- ミルクの飲みが悪くなる
などの症状が現れます。
初めて感染した乳幼児の約70%は軽症で数日のうちに軽快する一方、約30%では重症化する可能性があります。
重症化した場合には、酸素投与・点滴による補液・呼吸管理などが必要となり、入院することがあります。
重い合併症など
特に乳幼児では、
- 無呼吸発作
- 急性脳症
- 中耳炎
などにも注意が必要です。
3.RSウイルス感染症の発生状況・重症化に関する情報
2010年代には、年間12万人~18万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、3万人~5万人が入院を要したとされています。
また、入院例の約7%が人工換気を必要としたとの報告があります。
さらに、海外の追跡研究として、乳児期にRSウイルス感染症で入院した児では、その後の喘息発症率が高かったという報告が紹介されています。
| 年齢 | 対照群 | 乳児期にRSウイルスで入院した群 |
| 3歳 | 1% | 23% |
| 7歳 | 3% | 30% |
| 13歳 | 5.4% | 37% |
RSウイルス感染症にかかったすべての子どもが将来喘息になるという意味ではありません。
4.感染経路
RSウイルスは主に以下の経路で感染します。
飛沫感染
感染者の咳、くしゃみ、会話などによって飛び散ったウイルスを含むしぶきを吸い込むことで感染します。
接触感染
ウイルスが付着した手指、おもちゃ、手すり、その他の物品などに触れることで感染します。
5.RSウイルス感染症の治療
RSウイルス感染症には、基本的に症状に応じた対症療法を行います。
重症化した場合には、
- 酸素投与・酸素吸入
- 点滴による補液
- 呼吸管理
- 必要に応じた入院
などの治療が行われます。
6.日常生活でできる感染予防
基本的な感染対策を日常生活の習慣にすることが重要です。
- 流水・石けんによる手洗い
- アルコール製剤による手指消毒
- 換気
- 必要に応じたマスクの着用
- おもちゃや手すりなど、日常的に触れる物の消毒
特に、鼻水や咳などの呼吸器症状がある場合には、マスクを着用できる年齢の子どもや大人はマスクを使用するなど、感染対策を徹底することが重要です。
7.RSウイルスワクチンと母子免疫
母子免疫とは
生まれたばかりの赤ちゃんは免疫機能が未熟で、十分な量の抗体を自分で作ることができません。
一方、妊娠中に母体が持つ抗体の一部は、胎盤を通じて胎児へ移行します。この仕組みを「母子免疫」といい、生まれた赤ちゃんを生後数か月の間、感染症から守る役割を担っています。
RSウイルスについては、この母子免疫の仕組みを利用して、妊婦にワクチンを接種し、母体で作られた抗体を胎児へ移行させる方法が用いられます。
8.RSウイルス母子免疫ワクチン「アブリスボ」
現在、RSウイルスについては、赤ちゃんに直接接種するタイプのワクチンはなく、妊婦に接種する母子免疫ワクチンが用いられます。
定期接種に使用される母子免疫ワクチンは、ファイザー社の組換えRSウイルスワクチン「アブリスボ」です。
なお、同じ組換えRSウイルスワクチンでも、GSK社の「アレックスビー」は母子免疫ワクチンとして使用できません。
9.定期接種の対象者と接種時期
2026年度から、妊婦へのRSウイルスワクチン接種が予防接種法に基づく定期接種の対象となりました。
定期接種の対象
接種時点で妊娠28週0日~36週6日の妊婦
過去の妊娠時に組換えRSウイルスワクチン(母子免疫ワクチン)を接種したことがある人も対象とされています。
接種回数
1回
接種方法
0.5mLを筋肉内に接種
10.接種時期についての注意
母子免疫ワクチンは妊娠中に接種し、特に妊娠28~36週の期間に接種することが推奨されます。
また、接種後14日以内に出生した乳児については有効性が確立していないため、妊娠38週6日までに出産予定の場合は医師に相談する必要があります。
11.ワクチンによる効果
妊娠中に母子免疫ワクチンを接種することで、母体で作られた抗体が胎児へ移行し、出生後の乳児のRSウイルス感染による下気道感染症(肺炎・気管支炎等)の発症・重症化を予防する効果が期待されます。
有効性は以下のとおりです。
| 予防対象 | 生後0~90日 | 生後0~180日 |
| 医療受診を必要としたRSウイルス下気道感染症 | 約6割 | 約5割 |
| 医療受診を必要とした重症下気道感染症 | 約8割 | 約7割 |
つまり、特に出生直後から生後数か月の重症化予防に大きな意義があります。
12.接種できない場合
以下に該当する場合は接種できません。
- 発熱している
- 重篤な急性疾患にかかっている
- ワクチンの成分によってアナフィラキシーなどの重度の過敏症を起こしたことがある
- その他、医師が予防接種を行うことが不適当と判断した場合
13.接種前に医師へ相談が必要な場合
以下に該当する場合は、接種前に医師・看護師へ相談することが重要です。
- 心臓・血管系、肝臓、腎臓、血液などの基礎疾患がある
- 血小板が少ない、出血しやすい、凝固障害がある
- 抗凝固療法を受けている
- 過去の予防接種後に発熱や発疹などのアレルギー様症状があった
- ワクチン成分にアレルギーがある、またはアレルギーを起こす可能性がある
- けいれんを起こしたことがある
- 免疫不全と診断されている
- 近親者に先天性免疫不全の人がいる
- 妊娠高血圧症候群の発症リスクが高いと医師に判断されている
- 過去に妊娠高血圧症候群と診断されたことがある
- 授乳中である
また、注射や採血で気分が悪くなったり、失神した経験がある場合も、接種前に医師・看護師へ伝えることが勧められています。
14.ワクチンの副反応・安全性
接種後には副反応が生じることがあります。
主な副反応
- 接種部位の痛み
- 腫れ
- 赤み
- 頭痛
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 発熱
その他の副反応
- 血圧低下
- 吐き気
- 失神
また、海外の一部報告では、妊娠高血圧症候群の発症リスクが増加する可能性が報告されています。
ただし、その結果の解釈には注意が必要で、薬事承認に用いられた臨床試験では、妊娠高血圧症候群の発症リスク増加は認められていません。
15.接種後の注意
接種後は一定時間、医療機関で注意深く様子を見ることが推奨されています。
接種当日は、
- 安静に過ごす
- 接種部位を清潔に保つ
- 入浴は可能だが、接種部位を強くこすらない
- 接種部位の変化や体調の変化に注意する
ことが重要です。
高熱、けいれん、接種部位の異常、その他の体調変化などがあれば、速やかに医師の診察を受けることが勧められています。
16.他の医療機関を受診するとき
接種後に体調の変化などで他の医療機関を受診する場合は、
- 母子健康手帳を持参する
- アブリスボを接種したことを医師に伝える
- 受診したことをアブリスボを接種した医療機関にも知らせる
ことが勧められています。
また、アブリスボの副反応によって健康被害を受けた場合には、補償を受けられる場合があります。
